T-REX JIUJITSU ACADEMY 中村勇太(和術慧舟會TEAM T-REX/T-REX JIUJITSU ACADEMY)インタビュー
2011年9月13日(火) 福岡・T-REX JIUJITSU ACADEMY
インタビュー&写真:池田博紀
10月2日東京・ディファ有明にて開催される「PANCRASE 2011 IMPRESSIVE TOUR」にて近藤有己(パンクラスism)と対戦する中村勇太(和術慧舟會TEAM T-REX/T-REX JIUJITSU ACADEMY)にインタビューを行った。中村は今年の8月に常設ジムを開き、生徒へ柔術の指導を行っているが、その教え方はベーシックな動きの反復練習に重点的をおいており、自身も柔術家として柔術の公式戦に積極的に参加して、現在は茶帯を巻いている。柔術の技術がありながら、MMAの試合では打撃にこだわる理由。そして自身のプロ意識を語ってくれた。
池田:10月2日に近藤有己選手と対戦をする訳ですが、近藤選手は過去にはミドル、ライトヘビー、無差別級にてキング・オブ・パンクラシストの座に就いた経験がある選手と対戦するわけですが、中村選手は対戦にむけて思うところはありますか?
中村:ウチの生徒が「近藤選手と言えばパンクラスの魂と言える存在ですよ」と言ってますが、正にその通りだと僕も思いますよ。船木誠勝、鈴木みのるの両選手がいなくなった今で、誰がパンクラスかと言うと、それは近藤有己選手しかいないと思います。
池田:確かにパンクラスを代表する選手として近藤選手は、それだけの功績を作った選手ですね。
中村:僕の戦績(パンクラス戦績8戦1勝6敗1分)では、とうてい戦れる選手ではないです。そう僕は思っているんですが、戦る以上は、勝ちます。
池田:中村選手のプロのMMAの戦績は20戦以上を超えていますが、その戦績ではKO、TKOの数が目立ちます。一本とかでなく、打撃でのKO率が8割です。試合でもスタンドで打ち合いますが、中村選手は打撃でのKOに対するこだわりがあるのでしょうか?柔術の試合も見たことがありますが、十分な寝技の技術もあると思います。それらの寝技の技術も使ったグラウンドで戦えば試合の勝率、打ち合いでの危険性が減ると思いますが?
※2011年8月7日 日本ブラジリアン連盟(BJJFJ)主催「第12回全日本選手権」アダルト紫帯メイオペサード級2位入賞(決勝は同門のためシェア)。その後、茶帯へ昇格。
中村:GLADIATORもそうですが、福岡でやっている興業では「今日初めて格闘技の試合を観に来ました」って言う観客が沢山いると思うんですよ。
池田:確かに福岡ではあまり、プロで大きな興業でやっている総合格闘技の大会の数は多くないのが実状ですね。
中村:僕もそうなんですが、チケットを身内に手売りして来て貰ってるので、そういった人は総合格闘技とプロレスの区別がついてない人もいるんですよ。だから、そういった層に寝技のグランドの攻防を見せても、その面白さは多分伝わらないと思うんですよ。
池田:確かに、いくら上のポジションをキープして、コツコツとパウンドを入れた試合を見せても、寝技を理解していない観客が見ても何も伝わらないと思いますね。
中村:最近よく聞く削り合いを見せても、それでは駄目です。今の競技としてのMMAは、いかにテイクダウンを奪い、上のポジションをキープして、時間を上手く使わないと勝てない競技なっています。
池田:GLADIATORにしても、プロ興業で格闘技を行う場合は、観客にチケットを買って貰ってイベントとして行っていますので、プロ興業と競技性を保つのは難しいことですね。
中村:競技性を重視して大会などを行う場合は、それはそれで正しいと思います。ですが、競技でなく興業としてやっている大会では、付き合いで来ている観客、一回限りの観客がいるわけですね。僕が呼んでいるお客さんは、はっきり言って僕が勝とうが負けようが、僕の戦っている姿を応援してくれます。だから、いかに一般の観客で来てくれる皆に楽しんで貰えるかを考えています。
池田:確かに面白い試合をすれば、観客は次の興業でも足を運んでくれますね。なら面白い試合は何をすればいいかと言うと、単純に言えば殴り合いで相手を殴り倒す試合ですね。
中村:僕が打撃にこだわりだしたのは、PRIDEが全盛期の頃に、一緒に見ていた人が、関節技で勝った試合を見てから、僕に「あれ痛いの?」って言ったんですね。僕らは試合に出る前には誓約書に試合で死んでも文句言いませんってサインしてから試合に出ています。そして頑張って試合して「あれ痛いの?」って言われるぐらいなら、殴って勝てば、素人が見ろが子供が見ろうが、殴って倒せば分かりやすいじゃないですか?
五味隆典選手だって、コンバットレスリングで全日本を獲るぐらいグラップリングの実力があるじゃないですか、それなのに「判定はダメだよ。KOじゃなきゃ」って言ってたわけですから、だから僕が思うのは「アマチュアでは自分の為だけに戦えばいい、でもプロになったら、観客に魅せる試合をしないといかんよ」と。
池田:プロは観客を喜ばせ、早く言えばプロはお客さんを喜ばせてナンボですね。アマチュアで競技として求めている場合は、それはそれで正しい道ですね。
中村:アマチュアは参加費を払って出場しているわけですから、自分が満足できるならそれでいいと思います。だから「俺ほどの商業ベースの格闘家はいない!」と思いますよ。
池田:ですが、中村選手も今年で茶帯に昇格されているぐらい柔術の試合には積極的に参加されていますね?
中村:僕は柔術の試合の方が好きなんですね。競技として好きなんですよ。ただ九州では柔術を観客に見せれる環境が整っていないと思いますね。
池田:柔術の大会では道場の仲間は応援に駆け付けますが、柔術を知らないで来てくれている観客が何人いるかと言ったら、決して多い数ではないでしょうね。
中村:今はマイナースポーツなんで、僕としては競技人口をもっと増やしたいと思っているんですね。本場のブラジルや、世界大会でも見ている観客がルールを分からないって事がまずないと思うんですよ。そして凄い人数が入って、ワンスイープするかしないかで、盛り上がりが凄いんですね。あの環境を作りたいと思っても、今の現状で、それを求めても無理だと思ってます。ルールは知らないし、ブラジリアン柔術っていう競技を理解している人が少ない。
だから僕が総合の試合に出るのは、柔術を普及させるためですね。柔術を広めるためのツールの一つとして、総合をやりたいって人に柔術の面白さを知って欲しいんですね。
池田:確かに日本では総合格闘技を始める場合に寝技は柔術を取り入れる場合が多いですね。指導者の多くが柔術をされている人が多いのも一つの要因だと思います。
中村:だから、僕が有名になれば「有名な選手がいるジムがいい」って生徒になって貰えば、あとは僕の指導で柔術を学ばせます。最初に言われた打撃でのKO率が高いってのも、僕は寝技に持ち込まれても自信があるから、スタンドでの打ち合いが出来るってこともあります。まぁ、あっと言う間に寝技で負けた事もありますが(笑
池田:2010年GLADIATOR9でも、寝技は一切なしでスタンドでのパンチでKO勝利。2011年GLADIATOR18では、ほぼスタンドの打ち合いの末に、鼻からの出血が激しくTKO負けでした。リングから表情を見ていますが、打撃は全然怖くないのでしょうか?打ち合いを楽しんでいるのでしょうか?
中村:相手の力の出ないところを狙って行くのが柔術なので、打撃も同じで力の出ないところにいれば打撃は怖くないです。僕が柔術を一番凄いと思い、ベーシックな動きにこだわりだしたのは、ケージフォースでチームクラウドの坂下裕介選手(中村の1R TKO勝ち)とライトヘビー級と相手の階級で、しかも元々ラクビーをやっていた選手なので、テイクダウンを奪ってからのパウンドで勝ち上がっていた選手なので、勝つとしたら打撃しかない、その代わり倒されるのは絶対に倒される。寝技になったら階級差もあるし、如何に立つかを考えてから、ひたすらやっていた時に柔術入門書に書いてある様な基礎的な技術に行きついたんですね。それら全てが理に適っているので誰かが言っていた「柔術さえやっておけばいい」というのも理解できる様になりました。
池田:指導風景でも見ておりましたが、青帯の方に他の生徒に説明を口でさせながら、動きを行っておりましたが、実際に柔術の動きを口で説明しろと言っても、実際にはとても難しい事ですね。柔術の動きは全て理で適っている動きであるためですが。
中村:感覚とかだけでやっていても駄目です。僕が生徒へ言ってるのは「出来る時と出来ない時があったら駄目だ」練習中には出来なくてもいい、その代わり何故出来なかったかを頭で理解出来ているか、出来ていないかで試合中での迷いが全然違います。
池田:打撃ではラッキーパンチって言葉があるぐらいに、偶然や運での打撃のヒットを奪えますが、柔術においては、まぐれで勝つということは滅多にありませんね。柔術で負ける場合は、それまでの流れで自身の動きでミスや怠った箇所が理屈で分かってしまいますからね。
中村:ウチでもMMAやっている生徒に言っているのは「気は強くなくてもいいけど、気持ちが強くないと駄目だ」と言ってますね。例え一発貰ってから、腹が立ったんなら「判定でもいいから試合に勝つ!」と思えと指導しています。気性を荒くする必要はないけど、冷静でありながらハートを強くなれ。「何を使ってもいいけど、判定でもいいから勝て!」僕が思う柔術家のMMAで勝つイメージは、如何にして打撃の時間を減らし、上から潰していくか、柔術はレスリングと違って、相手の上を取ってからベースを作る競技。ベースさえしっかりしていれば、いくらでもパウンドを浴びせる事が出来る。本来の柔術家の勝ち方はパウンドアウトでないかと僕は思っています。立っている人間の顎を打ち抜くなどは技術、反復練習の積み重ねが必要です。だけど、押さえつけている人間を上から殴るのは、そこまでの練習はいらないと思います。
池田:柔術で基礎であるベースをしっかり作ればMMAでも通用するとお考えなのですね。
中村:僕が有名な大会に初めて出たのは熊本での開催されたパンクラス Zで掣圏会館の桜木裕司選手と対戦して殴り合いをしたんですが、打・投・極の3つが出来る選手なんて東京では、いくらでもいると思うんですよ。地方の選手が東京の主催者へ使って貰おうと思ったら、まずは主催者の要望に応えれる様にならないと駄目なんですよ。なら主催者が何を求めるとかと言うと、お客さんを沸かせることが出来る試合なんですね。だから、桜木選手とは殴り合いの試合をして判定で負けたのですが、その直後に「いい内容だったよ。東京でやる?」とオファーを貰えたんですね。
池田:例え負けた試合でも主催者が「この選手を東京で使ってみたい、見所がある」と思って貰えば、東京での興業でカードを組んで貰えますね。
中村:僕はパンクラスでは8戦1勝6敗1分なんですが、これだけ負けても主催者が僕を使ってくれるのは、はっきり言って殴り合いをするからなんですよ。ウェルター級以上の階級で、打・投・極が当たり前の時代において打撃しかやらない。分かりやすい試合をする。そこなんですね。
池田:中村選手としては、お客さんを楽しませる試合をする。だから打撃に徹底的にこだわってから、殴り合いの試合をするのが、中村選手の信条なのですね?
中村:モットーですね。商売ですから。
池田:柔術に関しては競技としてお考えなのですね?
中村:柔術に関しては僕のジムの生徒がお客さんです。何が楽しかったって生徒の皆さんで色々違うと思うんですよ。「ジムの雰囲気が良かった」、「強くなれるのが楽しい」など様々です。だから僕の仕事は雰囲気を良くするのも仕事、強くするのも仕事なんですよ。そしてMMAのリングで試合するのも、僕の仕事なんですね。
池田:柔術の指導も全て理に適った指導をされていました。柔術の技術がありながら、オープンフィンガーグローブで殴り合いにこだわるのは、全てお客さんのためなのですね?
中村:パンクラス以外でも、東京で開催されるプロ興業のチケットで、どんなに安い席でも5,000円はしますし、リングサイド席は10,000円以上します。これは決して安い金額ではないです。お客さんはチケット買ってくれて、会場まで足を運んでくれます。だからお客さんには満足して帰って貰わないと駄目なんですね。そして「見に来たけど、よく分からなかった」と言われるよりは「あの、体のデカい坊主の試合は面白かった」と言って貰いたいじゃないですか?
池田:観客に満足して貰うのが全てなのですね?
中村:あと、これは言いましたが地方の選手が生き残るための一つの方法ですね。九州で打・投・極が出来る選手がいますが、ほとんどが東京などで試合を組んで貰えません。
池田:東京ではジムも多く、打・投・極が出来る選手などは、それこそ数多くいますから、わざわざ地方である九州から呼んで貰える機会は決して多くはないでしょうね。
中村:階級はパンクラスのウェルター級(77.1kg)からライトヘビー級(93.0kg)まではオファーを受けれます。ルールも普段から練習しているんで、柔術からキックまでルールにこだわってないです。だからそれもオファーが多い理由ですね
今はアマチュアで総合格闘技をやっている選手までプロでやるような減量をやってから、体重を落として試合に出ているじゃないですか?
池田:確かにアマチュアでも体重摂生を行い、体を絞ってからアマチュアの試合に出場する選手は多いですね。
中村:体を絞って絞って、それこそ60kg切る、または60kgぐらいの選手で果たして地方の選手が東京に呼ばれるかと言ったら、まず呼ばれない状況なんですね。今はGLADIATORが年に2、3回とか九州で興業を行っているんで、少しはリングに上がれる機会が増えて来たとは思うんですが。
池田:しかし興業を行うためには興業を行う団体、そして支援してくれるスポンサーなどが必要です。それらを九州に呼ぶためには、九州内で面白い選手。看板になれる選手の存在が必要となりますね。そうでないと興業が行えません。
中村:そうですね。そう言う意味では、僕の生徒が僕の意思を継いでくれています。僕の生徒は興業に出る際は「自分だけ満足するな」と言い聞かせています。オープニングファイトで2、3戦キャリアを積み、本戦に出場できて1万円でもファイトマネーを貰ったら「自分が勝ってそれだけで満足するな!」お金を貰う段階で、プロとして仕事をする責任があります。
池田:プロ意識を持ってリングに上がらないとプロ興業は続かないですね。
中村:お客さんが来ないと興行主も興業をやってくれません。その為には出場する選手が観客を沸かせる試合をやってくれないと九州で興業は育たないんですね。
池田:それでは10月2日に中村選手が近藤選手に勝つと、出場予定である福岡で11月開催予定のGLADIATORにて一つの看板となりますね。
中村:「あの近藤有紀に勝った選手が出るなら、一回に観に行ってみよう」となりますね。そのぐらい近藤選手の知名度があり、名前を知らない格闘技ファンはいないと思いますね。
池田:やはり今回の対戦のオファーを受けたのは、九州の総合格闘技界を盛り上げたいと言う思いがあったからでしょうか?
中村:僕が近藤選手に勝てば、九州内の僕と戦える階級の選手が、僕を倒せば「近藤有己を倒した中村から勝利」って言う、いわば首を持ってから大阪や東京の興業に行けますね。
池田:確かに11月に福岡で開催されるGLADIATORに出場される場合は、注目度も違いますね。やはり、そうした事で九州総合格闘技界を盛り上げたいというお気持ちがあるでしょうか?
中村:これは違うと言う人もいるかもしれませんが「九州の総合格闘技を引っ張ってきたのは俺だ!」という自負があります。僕は福岡の博多から出らずにパンクラスなど東京のリングで戦っています。そして近藤選手とカードを組んで貰えたので、必ず勝ちます。
池田:そして九州のMMAを盛り上げてから柔術を広めたいとお考えなのですね?
中村:来年には30になりますが、大きい階級で戦ってきて、これまでのプロとしての意地があります。だから近藤選手に勝ってから「俺が九州のボスだ!」それを証明させます。
 
※柔術の指導においてはベーシックな技の動きを徹底的に教え込み、その動きを頭で理解することの重要さを生徒に伝えている。
 
※中村選手に練習を一部公開して貰ったが、ミット打ちでは、一発一発の重いパンチを重点的に行った。

中村勇太(和術慧舟會TEAM T-REX/T-REX JIUJITSU ACADEMY)
MMAのプロ興業のリングで上がりながら、柔術家として柔術の公式戦に出場。プロのリングでは殴り合いの「打」にこだわりを持って、常に観客を沸かせる試合を信条とする。
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